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29. スキンハンガー “女性は肌の飢えを癒す”


大人になってからの原因のわからない焦燥感・不安感・生きづらさなどは、『スキンハンガー』が原因であることが多いと言われている。


スキンハンガーとは、肌の飢え・飢餓感のこと。


「肌の飢え」なんてすごい表現だが、幼い頃にたくさん触れて貰えなかった子供ほど、大人になって自分の感情をコントロールするのが難しいと言われている。


スキンハンガーが必要とされるのは、人と人との触れ合いがとても大切だと言うことだろう。


新生児救急救命室に入院中の赤ちゃんを親の裸の胸に乗せるのも、そのためである。


肌に触れると皮膚の“センサー”が刺激され、脳内の迷走神経に信号が送られる。


迷走神経が活性化すると神経が鎮まり、心拍数と血圧が下がってリラックスしていることを示す。


肌を触れ合わせることは、生物学的にもいいことなのである。


スキンシップによって、人の心は落ち着き、幸福感を感じ、精神的に健康になる。


47歳独身、上場企業で管理職を務めるV子は「更年期も重なっているのか、最近、ときどきふっと虚しい気持ちに襲われる」ことがある。


大学を卒業し就職、それなりの地位を固めており、一生懸命に働いてきたという自負はある。


20代は必死で働き、30代になって仕事が楽しくなり、ハッと気がついたら40代になっていた。


結婚も考えたが自分の中に願望はなかった。


恋愛もそれなりにしてきた。


既婚者とつきあったこともある。


だが、今となってはすべてが“思い出”と化している。


2年ほど前、高校の同窓会があった。


ほとんどの人が結婚していて、夫の愚痴をこぼしながらもケラケラ笑っていた。


夫とセックスレスだったり、セックスのたびにイク、イカないの話しまで。


アラフィフの夫婦生活....


じゃあ結婚したかったのかと言われれば、やはりそんなにしたいとは思えなったという結論になる。


それでも一度くらいはすればよかったのかな、あるいはしたくてもできなったのかな、などと考えてしまう。


女、半世紀近く生きていれば苦悩も多い....


学生時代の女友達と会っても気が晴れない。


気の合う同僚と食事しても、帰り着くところはいつもの自宅だ。


「私を待っている人は誰もいない....」


誰かに強烈に愛されたい、どうしても一緒にいたい、必要なんだと言われたい。


そんな思いもあるが、実際にそう言われたら「うっとうしい」と思う自分もいる。


このまま悶々としながら50代を迎えるのもイヤ。


だからといって何もかも投げ出して男性と新しい人生を送るのは無理だ。


ここから新たに何かを始めても結果にこだわるV子には冒険もできない。


それでもさびしい夜に足りないものに目がいってしまうから苦しくなる。


それはひとりで生きていくことの残酷さであるのかもしれない。


大人になってからの、原因のわからない焦燥感・不安感・生きづらさなどは、『スキンハンガー』が理由のひとつと言われる。


裸のV子をやさしく包み込むように抱きしめ、肌と肌を合わせながら背中を撫でる。


すると「彼女はこのままイッてしまうかもしれない…」という感覚が伝わって来る瞬間がある。


それをどこで判断しているのかというと『呼吸』だ。


彼女のカラダがフワッと浮くような瞬間がある。


それが意識の変性した瞬間だ。


そうしていると、やがて性的変性意識状態(性的トランス状態)に入り、カラダが無意識に小さくピクン、ピクンとノッキングを始める。


ノッキングは、エクスタシーというトランス状態の兆候のひとつ。


女性のカラダは予想をはるかに超えた可能性で満ちている。


長いこと常識に縛られ自分の性を抑えてきた女性ほど、奥底にはそれらをひっくり返すほどの性エネルギーが溜まっている。


そして、このようになった女性は号泣することが多い。


それは、自分でも意識していない「内に秘めたる感情」を吐き出した瞬間だ。


心理療法でいうところのカタルシスである。


カタルシスとは「心の中に溜まっていた澱のような感情が解放され気持ちが浄化されること」を意味する。


中にはトラウマを奥深くまで掘り下げられ、改善のきっかけになることもある。


『大丈夫! どんな自分が出てきても私が受け止めてあげる! 半分は私が手伝うから、あと半分は自分で受け止めろ!』


体の反応からたくさんの断片を集めて、この日最後にV子から出たのは、


「お母さんに抱きしめてもらいたかった」

「お母さんに褒めてもらいたかった」


という言葉だった。


愛されたいという思いが満たされないまま、大人になってしまった。


理解はしていても感情に蓋をして良い人間になろうとすると、段々と頭と心が乖離してしまいそうになる。


心はどこかいつも不安だったり、自信が持てなかったり。


恋愛も同じパターンを繰り返してしまったり。


「肌のぬくもりでカラダ中を包み込まれる安心感と肯定感」への欲求。


肌の欲求を満たしていくと、心が安定して自己肯定ができるようになり、自分を愛することも人を信じることもできるようになる。


安心や安らぎを得るだけでなく、前向きになり、自尊心が高まり、社交的になり、心を開きやすくなる。


それは大人になってからでも遅くない。


変性意識状態に入ることにより、自分自身のセルフイメージを書き換え、過去の辛いことによって生じたトラウマやマインドコントロールを書き換えることができる。


「私が家に帰ったら、いつもあなたがいればいいのに…」


V子が探していたのは性の解放ではなく、そのキッカケだったのだ。


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