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27. 心の安定は「肌」に表れる


セックスは人との触れ合いで始まり、触れ合いで終わる。


やさしい人肌のぬくもりは、女性の記憶の奥底で泣いている孤独な少女を泣きやませ、深い安心感で包み込んでくれる。


心の疲れや重荷を取りのぞく、安らぎの愛なのだ。


愛する人と、身も心もひとつに溶けあうセックスは素敵なもの。


女性なら一度ならず抱く夢だろうが、それもそのはず。


それは「目指しなさい、そこへ向かいなさい、大丈夫」という、本能のメッセージだからだ。


心の安定は「肌」に表れる。


女性と男性が求め合えば、肌と肌、皮膚と皮膚が必ず触れ合う。


普段は何気なく自分自身を覆ってくれている皮膚だが、その外界との境界はわずかに厚さ2mmもない。


皮膚は大切な情報を伝える器官だが、胎内で胎児が生まれるときに外胚葉という脳と同じ部位から発生している。


発生的には脳と皮膚は一卵性双生児みたいなものらしい。


皮膚というのは、実は「身体を被う、薄く伸ばされた脳」だったのだ。


だから愛撫という肌の触れ合いに真価を発揮するのは当然のことで、皮膚がただ触れ合うだけで、様々な感情を呼び覚ましてくれる。


つまり、皮膚と皮膚を触れ合わすということは、皮膚という仕切りをなくし、脳と一体となることで、やがてお互いが融合(溶けあうオーガズム)に至る行為なのだ。


女性は男性の頼もしいカラダを実感し、男性は女性のやわらかなカラダを愛おしく感じる。


心が折れそうなときは寂しさを埋め勇気づけてくれる。


心を許せる誰かと触れ合いたい。


それは脳が感じる当たり前の欲求なのである。



T子の自宅はタワーマンションの27階。


部屋に着くまでに3箇所のセキュリティーを通らなければならない。


1階のホールにはコンシェルジュカウンターがあり、会釈してエレベーターに乗り込む。


チャイムを鳴らすと、重たそうなドアが開かれ、ヨークシャーテリアを抱いたT子に招き入れられた。


リビングダイニングに通され、私は拾われた子猫のように腰を下ろす。


初めて自宅に通されたときは、相手のペースに合わせて、しばらく身を置くことにしている。


T子は愛犬を隣の部屋に入れると、紅茶を淹れて私の横に座った。


飲みながら雑談をしていると、キャンキャンと鳴き始め、やがて収まることなくドアをかき始める。


「良いですよ、ワンちゃんを出してあげてください」


そう促すと「ごめんなさいね」と言いながら犬をリビングに解き放った。


彼はすぐさまソファに飛び乗り、私に鼻を近づけてきた。


思わぬ侵入者に戸惑いを見せながらも興味津々。


私は匂いを覚えさすため、しばらく自由に嗅がせる。


彼はすぐに落ち着き、2回目に行ったときは、尻尾を振りながら私を迎えるようになっていた。


彼の邪魔にならないように、ゆっくりとT子の肩を抱き寄せると「ハぁ~~」と吐息を漏らしながら私の肩にうなだれる。


しばらくするともじもじしながら膝を押しつけてきた。


私の膝に手を置いたりしていたが、あえて触れないように少し焦らす。


T子は、堰が切れたように、ニットのワンピースをたくし上げ、私の腿にまたがり、体をぴたっりと重ねて合わせて来た。


頬と頬も触れ合わせ、体温をまんべんなく感じ合いながら、心の動きに身を任せる。


徐々にT子の心とカラダから力が抜けていくのがわかる。


全身がだらっと脱力していき、さらに私に身を預けると、受け止める私の方も心が落ち着く、と同時に気負いが抜けてリラックスしていく。


この広い世界でたったふたりきりになったような純粋で小さな愛の気配を感じ合う。


理性を閉じて、純粋にふたりの世界に浸り、心のゆらぎと心地よさに身を任せる。


ただ肌で感じることから気持ちが動き出し、自然に心の奥へと流されていく。


そこにいるのは、女性なら、少女の自分。男性なら、少年の自分だ。


女性は今まで誰にも言えなかったことや、彼に伝えたいのに伝えられなかったこと、自分が悪かったことを素直に口に出したくなるのかもしれない。


T子は初めて会った私の膝の上で抱かれながら、「ごめんね」と言った。


このときだけは思いっきり甘えたらいい....


男性は伝えられた内容に答えを提示する必要はない。


「うん、いいんだよ。よく頑張ったね、とても偉かったよ。」


指の動きでそう感じてくれれば心とカラダの浄化が進んでいく。


髪、頬を撫で、抱き合ったカラダをゆりかごのように揺らしてあげると、女性の表情は別人のようにピュアな微笑みに変わる。


セックスは、社会的なしがらみから解き放たれて、心身を浄化させるためにある。


正義感に溢れるすてきな少年に出会い、救いを待ちこがれていた少女に戻れた気がするまでゆっくりと触れ合う時間があるほうがいい。


「待つ」というゆとりが大事なのである。


セックスという快楽の旅は、早く目的地にたどり着こうとする新幹線や飛行機の旅ではない。


ゆったり優雅に進む心地の良い船旅のようなもの。


変わっていく景色ひとつひとつを眺め、ふたりだけの時を大切に味わう。


男性が女性に行う愛撫にはいくつかの方法やテクニックがあるが、どういう方法でも忘れずに心がけることは“水”である女性のカラダをあたためることだ。


性器や乳首など性感帯の刺激に一生懸命になり過ぎて、女性のカラダ全体が冷えてしまったらもったいない。


筋肉量や体力差もあるため、男性が思う以上に優しくゆっくりあたためないと、女性の心は焦り、カラダは置いてきぼりになる。


カラダを密着し、時間をかけて抱きくるむと、女性の焦りはホッと消え空回りを避けられる。


T子のお尻や股間、脚などが、ふたたびもぞもぞと動き出すまで、背中や腰をゆっくり撫でる。


もっと....


まだこうしていたい....


お互いに、そんな気持ちになるまで抱き寄せていると、私の膝の上で、もぞもぞと腰がうねりはじめる。


ニットのワンピースの下から手を入れ、ゆっくり太ももから股間に這わせていくと、パンティを履いていないワレメはもうびしょ濡れになっていた。


「初会から下着をつけずにワンピースを着ていたなんて....」


そう思っただけてペニスはフル勃起していた。


次の依頼の時、ドアを開けるとT子と愛犬が尻尾を振って出迎えてくれた。







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